イギリスの仕事関係の知人から、メールをもらいました。2日前の7月3日は、マラードが蒸機の世界最速記録を打ち立てた75周年の記念日だったそうで、今年はそれにちなんで、現存する同型機6両を集めてヨークの転車台の周りにはべらせるイベントがあるそうな。ワタシも知りませんでしたが、うち2機はそれぞれアメリカとカナダから、ですと。そして国内のマラードを除く3機が全て稼働機という、まあ、何から何までスゲェ国であります。
2003年に撮った3機のうちの1機、

60009 Union of South Africa のヘボい写真はこの際どうでもよくて、ググってるうちにスゴイ動画を見つけたんで、是非ご覧下さいまし。
4464 Bittern75周年の記念イベントの一つのようですが、これナマでファインダー覗いてたら失禁してたかも。
つくづくクレイジーな人たちです。。。
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マラード号はWIKIで情報を見ている時に速度記録記念日ということで情報を見つけました。「蒸気機関車の興亡」にもあったのですが、記録達成の一方で中央シリンダーに大きな負荷がかかりやすいという「グレズリー式弁装置」の弱点が露呈しており、その後のグレズリー式弁装置の放棄につながっています。グレズリー式弁装置の放棄の直接のきっかけは安定して動作させるためには微妙な調整が必要なところへ、第二次大戦のために保守体制が悪化したためで、グレズリー式弁装置を備えた機関車は全て中央軸もワルシャート式で駆動するように改造されています。このため、現在残っているマラード号の同形機はおそらく弁装置はグレズリー式の原型ではなく、ワルシャート式へ改造されていると思われます。
イギリスの無煙化は先のオランダ程ではありませんが意外と早く、1968年に達成したことが当時のRP誌にもありました。一方で遅くまで蒸気機関車を作っていたようで、日本国鉄のC63型に相当する「無煙化までのつなぎ」の位置づけで設計された蒸気機関車をかなりの数製作してしまい、かなりの数が数年で運用を外れてしまったらしいです。
以前蒸気機関車の水とブローとの関係について報告しましたが、詳細が記載されているのはRP73-10号であることを確認しました。RP誌の1973年から1975年にかけて「汽車のけむり」という表題の記事が連載されていたのですが、蒸気機関車の仕組みや現場での運用について詳細に記述されています。
水関係の記事を抜粋すると、千葉県の水は蒸気機関車用としてはあまり良くなく、特に海岸線沿いでは「お茶の立つ水は少ない」と表現されており、「硬水」であることが伺えます。関東では中央線沿いはあまり水質が良くなく、川越、山沿いの八高線、両毛線も不良で、悪名が高いのは烏山、佐倉、上総亀山、上総中野、八王子などとしています。地質的にはいずれの地も火山性の岩石(火山岩、深成岩)の基盤が地下の浅いところに広がっていて、地下水がこれらの岩石の影響を受けていると考えられます。
ブローは「濃度が高くなった缶水のミネラル分を抜く」手段と記載されており、「ブローの名所」は外房線の大網駅(旧線のスイッチバック時代)とのことです。大網から土気へ上る途中のトンネルに向かう急勾配が缶水の状態が悪化する条件が揃っているところで、上り列車は大網駅で機関車を切り離し、ブローをしてから次の列車に連結する「一段落ち運用」をしていた、とあり、「本線に出てから運用を一段落しにしてブローをしているところは全国でも稀であった」と記述されています。
中国大陸の水はやはりミネラル分が多いことも記述されており、江北ではミネラル分がブローで吐き出す水に匹敵する高濃度のものがあることが指摘されています。このため、ブローは頻繁で、南満州鉄道では「ブローは毎日で、それも運転中によくやるとのことである」とのことでした。
原口さん、
時速140キロ試運転の動画、お楽しみいただけたでしょうか。カマのポテンシャルもすごいですが、それを実現させる技術を維持していること、実現の場を提供する当局の度量など、さすが、という他ありません。で、グレズリー式弁装置ですが、ググってもあいにく機構は理解出来なかったものの、A4稼働機の一両であるSir Nigel Gresleyが、グレズリー式弁装置の生みの親である技師の名から取られているのを知ったのは収穫でした。
ブローオフに関して、日本の水質の話題は以前にも提供いただいた記憶がありますが、「一段落ち運用」なんてものが存在したとは、実に面白いですね。日本の蒸機がブローオフしてる写真というのは見た覚えがないのですが、にわか勉強で「蒸気機関車メカニズム図鑑」をパラっと見たところ、中国の蒸機が走行中に強制的にやるような構造ではないようですね。